ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ソトメシ十番勝負(6)

 で、ケバブの話。

 料理には視覚的要素がつきものだけど、ケバブのそれは格別だ。炙られている肉の塔があり、そこから削ぎ落とすようにして肉を取り分けてくれる。アイスといい、トルコの料理には、お客さんに何かを見せたいって要素があるのかも。

 ともあれ、何と言っても圧巻なのが、この肉の塔だ。食べるのは、あくまでも表面の一部だけ。だけどどうだろう、見ていると、あの塔が全て自分の腹に収まるような気がしてくる。

 チーズ欲と同様、時折込み上げてくるのが「肉食いたい欲」(“食いたい”は省略できないね)。そして、この欲求はかなり原始的だ。だからそれに見合うのも、ずばり原始肉だ。骨の周りにぐるりと肉が付いている、あれ。ケバブは、まさにそれを満たすためにあるような食品だ。実際には、棒に板状の肉を突き刺して積み重ねてるわけで、その意味で合成品なんだけど、どうせあれにかぶりつくわけじゃないから、それでいいのだ。実際に出てくる段階では、たいていサンドにした状態―ケバブと野菜をバンズで挟むやつ―なのが、ちょっと残念だけどね。

 ところで、ケバブは中近東流の肉の食べ方に関する一般名詞で、トルコ限定じゃないらしい。インド料理の場合、インド人がいちばんしやすい仕事だからって理由でやってる人も多いと聞く。本来IT技術者として日本に来たのに、気づいたらインド料理作ってた、とか。あらためて「トルコ料理の店」というのを探すと限られてくるけど、ケバブということなら、あちこちにある。あの店先にいる顔の濃い兄ちゃんたちも、そんな感じのトルコ人なんだろうか。いや、これも中近東全体かもしれないね。ぼくたちには、トルコ人とレバノン人を見分けることなど、まずできない。