ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

もやもやした朝

 夢での経験は、それが別段悪夢でなかったとしても、嫌な感じを伴う。ねっとりとした、まとわりつくような嫌悪感だ。息苦しさといってもいいが、呼吸とは無関係な部分も含め、近くするものの全体が息苦しくなるのだ。後頭部に鉛が仕込まれたような、そんな重さとも言える。

 いったいなぜだろうと考えていて、答えが見つかった。身体感覚だ。夢の中では、基本的に脳だけが動いている。そこで何かを感じたとしても、脳内に蓄積された過去の経験を再生しているのに過ぎない。それが不完全だから、嫌な感じになってしまうのだ。

 感覚情報は圧縮された形で記録されているのだろう。おそらくは、CDやJPEGがやっているのと同じような、不可逆型の圧縮だ。だが、その圧縮アルゴリズムを決める段階において「どうでもいい部分」と切り捨てられてしまったのは、覚醒した状態での判断を前提にしている。体験それ自体ではなく、体験の結果得られるものにのみ価値を置く判断基準だ。

 将来、マトリックス型VRが登場したとしても、この部分はどうにもならないのだろう。